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●変形性股関節症とは?
■股関節が痛くなったり、動かしにくくなる病気
| 股関節が痛くなる代表的な病気です。関節を滑らかに動かすために骨の表面を覆ってクッションの働きをしている「関節軟骨」が、何らかの理由によりすり減ってしまうために起こります。 日本では、生まれつき股関節の作りにやや問題がある「先天性股関節脱臼」や「先天性臼蓋形成不全」などのある人が後年変形性股関節症を発症するケースが多いですが、そういった股関節の異常のない人が老化などにより変形性股関節症になることもあります。 |
発症する時期は10代〜老年まで様々ですが、しかし臼蓋形成不全等があっても10代・20代の頃は痛みなどの不具合を感じないことが多く、30〜40代で変形性股関節症を発症することが多いようです。
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■女性に多い変形性股関節症
変形性股関節症は女性に多い病気です。
「先天性股関節脱臼」や「先天性臼蓋形成不全」が女の子に多いこと、女性は男性に比べ関節が緩く周囲の筋力も弱いこと、また女性は骨盤が横に広いので身体の中心線から股関節が遠くなるとより大きな力がかかること、などが関わっていると考えられています。
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●変形性股関節症の主な症状
○痛み〜でん部から股関節、太ももの痛み〜
初めは運動後や長く歩いた後などに、股関節に限らずお尻や太もも、ひざの上などに鈍痛が出ることが多く、この痛みは数日すると治まります。 少し症状が進むと、動き出すときに股関節辺りに痛みを感じる「始動時痛」を感じるようになります。痛む箇所は次第に股関節周りに限定されていきます。 さらに進むと動かしたり歩くと股関節の前後が痛む、一休みしないと歩けない、などの痛み「運動痛」が出るようになります。 高血圧と腎障害 |
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最終的には安静にしていても痛むようになり、痛みの程度もだんだんと強くなります。股関節に水がたまって腫れたり、夜間などにも痛みが出て睡眠が妨げられるようになることもあります。
○動きの制限〜股関節が動かしにくくなる〜
痛みが強くなるのにつれて、靴下が履きにくくなったり大きな段差が上りにくくなったりと、股関節の動きも悪くなってきます。 痛みから関節を動かさずにいると筋肉が硬くなり動きが悪くなる「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」が起こり、深く曲げたり足を開くなどが苦痛になってきます。また、拘縮がひどくなると骨盤が傾いて悪い方の足が短くなったように感じられるようになります。 |
○跛行(はこう)〜片足をひきずって歩く〜
痛い方の足をかばって歩こうとしたり、また痛みのために活動量が減って中殿筋などの筋力が衰えると悪い方の足をついたときに身体が傾くため、肩を揺らして足を引きずるような歩き方「跛行(はこう)」になります。
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●なぜ変形性股関節症になるのか?
■股関節のしくみ
股関節は骨盤(腰の骨)と大腿骨(ふとももの骨)の継ぎ目にあたり、骨盤側のおわん状の臼(うす)のようなくぼみ「寛骨臼(かんこつきゅう)」に、大腿骨の先端の球状の頭のような部分「大腿骨頭(だいたいこっとう)」がはまり込んでいます。
このような形状の関節を「球関節」「臼関節」と呼び、前後左右ナナメ・・と色々な方向に動かすことができる構造です。
骨盤側のくぼみ(=寛骨臼)も、大腿骨の先端部(=大腿骨頭)も、いずれも関節軟骨という弾力性のある組織に覆われていて、関節が滑らかに動くようになっています。
骨盤側のくぼみ(=寛骨臼)は深いおわん状で、広い面積で� ��腿骨頭と接して体重を受けるので負荷が分散されて、クッション役の関節軟骨もすり減らずに長く使い続けることができるのです。
また、股関節は関節包(関節を包む袋状のもの)やじん帯、筋肉などにより支えられており、簡単には外れないようになっています。
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■関節軟骨がすり減ることで発症
衝撃を吸収し関節を滑らかに動かす役割の関節軟骨。これが何らかの理由によりすり減り壊れることで「変形性股関節症」になります。
関節症は体重のかかる関節に起きやすく、他にもひざや脊椎、肘、手指などにも起こります。
過度の負荷が繰り返し加えられたり、外傷などによって軟骨は変性しすり減ります。加齢とともに軟骨のクッション性や修復能力も衰えていくので変性がより起きやすくなります。
外傷などの場合を除けば、軟骨がすり減るには通常は長い時間がかかります。
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●変形性股関節症の進み方
変形性股関節症は次のような段階を追って年単位で慢性的に進行します。
最終的に手術が必要になるケースが多いとされていますが、しかし誰もが同じように進行するわけではなく、股関節の形に異常があっても長い間進行しない人もいますし、また負荷をかけない生活習慣や、リハビリ・体重コントロール等の保存療法など、悪化が抑えられる要素にもよっても進み方は異なってきます。
○前期・・・レントゲンに変化なし 臼蓋形成不全などの股関節の形に異常があるが、軟骨のすり減りなどはまだ見られない時期。痛みはたまに見られる。 | |
○初期・・・骨の硬化がみられる/関節の隙間は少し狭いところも軟骨が傷つきすり減りだし、関節の隙間(関節裂隙・かんせつれつげき)が少し狭くなってきている状態。負荷が集中する箇所の骨が硬くなる「骨硬化」が見られ、レントゲンには白っぽく映る。無理をすると痛みが強くなる。 | |
○進行期・・・関節の隙間が狭くなり骨棘ができる 軟骨のすり減りが進んで関節の隙間が狭くなり臼蓋と大腿骨がぶつかったり接する部分も出てくる。骨硬化も進み「骨のう胞(こつのうほう)」という穴があく所も出てくる。壊れた骨を補うために「骨棘(こっきょく)」という新しい骨の増殖が見られる。痛みや動きの制限が強くなる。 | |
○末期・・・関節の隙間がなくなる 軟骨がすり切れてなくなり関節の隙間がなくなる。骨硬化が広がり骨のう胞も増える。骨が露出してぶつかるため骨がすり減り骨棘も成長し、股関節自体が変形する。痛みも股関節の動きの制限もさらに強くなり、杖が必要になったり日常生活にかなり支障が出る。 |
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●変形性股関節症の検査・診断
頸管ポリープ除去後の痛み
整形外科を受診すると、次のような検査を行い変形性股関節症であるかの診断が行われます。
・問診
いつ頃からか、どんなときにどの程度痛むか、先天性股関節脱臼や臼蓋不全があったかなどの病歴 等を確認する
・視診、触診
歩き方や身体の傾き、股関節の動き具合や痛み方 等を見る
・X線検査
関節の形、骨の状態、進行の程度 等がわかる
軟骨は映らないが関節の隙間と骨の状態などを見る
・その他、必要に応じて行う検査
CT検査・・・断層撮影により関節の細かい形態が把握できる
MRI検査・・・軟骨、じん帯、筋肉などの軟部組織の様� �が見られる
関節造影・・・造影剤を注入してのX線撮影。軟骨などの関節内の状態が見られる(MRIにより必要性が少なくなった)
など
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●変形性股関節症の治療
大きく分けて「保存療法」と「手術療法」の2つの治療法があります。
1.保存療法
保存療法の様子をみて、結果が芳しくない場合に手術が検討されます。
症状が殆ど出ていない場合でもよい状態を維持するために、また手術をすすめられた場合でも進行を遅らせるためや人工関節を長持ちさせるなど状態をよりよく保つために保存療法が必要です。
○体重コントロール
股関節にかかる負荷は体重の3〜10倍。体重が増えれば股関節への負荷が増えるので、食事制限と運動療法などを組合わせての体重コントロールが必要。
○負荷を減らす日常生活の工夫
運動などをがんばり過ぎない、痛むときは安静に� ��る、外出する時には杖を使うなど、無理をせず痛みを避け負荷を減らす。どのくらい歩いたら痛みが出るなど限界を知りセルフコントロールする。
寝起きやトイレ、入浴、家事なども、動作を工夫して痛みを避ける。
○運動療法、温熱療法などの理学療法
股関節症の患者さん向けの筋力トレーニングやストレッチ、ウォーキング、プールでの水中運動など。筋力の維持、拘縮の改善、関節の血行改善、気分転換、肥満防止に。
○薬物療法
急性期の痛みや進行期や末期の強い痛みなどのときに消炎鎮痛剤など。進行がわかりにくくなるので頼りすぎないように。
2.手術療法
保存療法での改善がない場合には手術が検討されます。それぞれの手術の特徴・問題点と、進行の程 度や年齢、社会的・家庭的環境などを考慮して検討します。
○関節を温存する手術
骨を切って股関節の形や負荷のかかる方向を改善させる手術。
寛骨臼回転骨切術、骨盤骨切り術、内反骨切術、外反骨切術 など
○関節を廃絶する手術
自分の股関節をあきらめて、関節を固定したり人工のものに置換えたりする手術。
人工関節置換術、股関節固定術 など
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(以上は 書籍・サイトなどの資料を参考に一般的な変形性股関節症の知識をまとめたものです。2008/01/25 :参考文献)
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