TBSの「報道特集」(2004年3月7日(日)夕方5時半からほぼ30分)の中で報道された自閉症水銀原因説と水銀排出療法(キレーション)について
□2004年3月7日:
TBS系列テレビ局が全国で放映した「報道特集」(東京では2004年3月7日(日)午後5時半から)は、自閉症の原因が水銀であり、それに対して有効なキレート療法についてのものでした。水銀原因説自体はアメリカで2000年に発表されたものですが、当時否定されたものの、再々浮上してきています。その背景としては、アメリカでは水銀説を根拠にした訴訟問題が起こされており、論争が再燃してくるということがあります。
【番組のあらまし】
*「自閉症の原因とその療法についての一つの説をご紹介します」として、「予防接種のワクチンの中に防腐剤として含まれる水銀を体内から排出できない子どもたちがいる、それによって脳の機能障害を起こし、自閉症を発症させる。その治療法として、重金属(水銀など)を体外に排出させるキレート剤の服用が効果がある」と説くアメリカのコナー医師・マーシャル医師に取材。またキレート療法を行っているアメリカと日本の子どもとその家族が登場し、効果があると証言した。
*アメリカでは、予防接種をめぐり訴訟問題となっているためでもあろうか、療法を勧めるアメリカの医師の証言は断定的で、「自閉症発症率は100人に1人、増加傾向にある」「自閉症の4分の3は水銀が原因で後天的に発症しており、その人たちに対してキレート療法は有効である」「ずっとよくなるか、治る。その効果は永遠に続く」と述べており、療法を行っている親たちも「これしかやっていない」「効果があった」と明言しているなど、全体のつくりとして、非常に効果があがっていると受け取られる形になっている。
□2004年3月7日~:
番組放送後、支部への電話での問い合わせもあり、反響には大きいものがありました。TBSにも、また、番組中に登場した(療法を実施している子どもさんのIQを測定した)クリニックにも、相当数の電話が寄せられたようです。内容は、「どこでこの療法を行っているか」「どこで薬剤を入手できるのか」「尿検査を行ってくれるところはどこか」など、この療法に寄せる関心の高さがうかがえるものであったとのことでした。
それほど反響を呼んだ理由のひとつには、番組の内容が非常に説得的に作られていたということ、また、小さいうちからの診断が進む中で、良い療法があればやってみたい、「自閉症を治したい」という親の気持ちの切実さからであったと思われます。
しかし、自閉症水銀説、またはキレート療法の有効性を鵜呑みにするのではなく、落ち着いた検討が行われなければなりません。それに関しては、番組の内容構成の適正さについても考えてみるべき点がいくつもあるように思われます。
そのために、以下の資料をご覧いただきたいと思います。
【資料内容】
1.放送後の反響を受けていち早く出された奈良県支部HPのコメント
2.社団法人日本自閉症協会の声明文
3.自閉症児者を家族にもつ医師・歯科医師グループの声明文
4.協会の申し入れを受けて行われたTBSの対応
そして、
5.TBS初め各報道機関に望むもの:東京都自閉症協会のコメント
□2004年3月9日:
【資料1】社団法人日本自閉症協会奈良県支部のHPから
どのくらいの尿は一日の魚の排泄を行います
■3月7日(日)の夕方、TBS系列局の「報道特集」で「自閉症と水銀」という番組が放送されました。番組の内容は「キレート剤を用いた水銀排出療法」というものでした。この件について、放送後たくさんの方々から問い合わせがあります。
自閉症協会では、現在番組を製作したTBSも含めて事実確認を行っているようです。
多くのキレート剤は、服用することで悪心・嘔吐や消化器症状を呈すと言われています。子どもの場合はなおさらと思われます。自閉症協会では早急にコメントを出すべく準備中です。自閉症協会奈良県支部では、問い合わせに対し、支部会員の丸橋先生のMLの内容で対応しています。以下の内容です。参考にしてください。
(河村)
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■養育部の丸橋です。(※日本自閉症協会奈良県支部の会員さんで自閉症のお子様をおもちのお医者様です。元々心臓外科医ですが、いま自閉症の勉強をしておられます。)
○私の所にも水銀キレート剤の入手方法についてすでに数件の問い合わせがあります。私は現在仕事中でテレビを見ていなかったのですが、非常に問題だと感じました。結論から先に書かせて頂くと、水銀は自閉症の発症には全く関係がありません。
これは医学界の常識になっています。とりあえずこれを先に流します。詳しくはすぐに続メールをします。
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○水銀が自閉症の原因と言われ始めたのはアメリカが最初だと思います。アメリカで三種混合ワクチン接種をしてその時以来自閉症様症状がでたということで、ワクチンに極微量含まれていた水銀が原因と裁判が起きたのは事実です。アメリカの三種混合は、日本と違って麻疹、風疹、流行性耳下腺炎だったと思います。ちなみに日本では破傷風、ジフテリア、百日咳です。この麻疹ワクチンに防腐剤として水銀が極微量含まれていたのです。
有機水銀は神経毒なのも事実です。
これは当然、アメリカ食品衛生管理局FDAの許容範囲であるのは言うまでもありません。
訴訟大国アメリカです。何らかの因果関係をこじつけででも言って裁判にしてから和解金でも得られればアメリカンドリームの世界です。そんな低い次元の話が日本に伝わってきただけです。
私が推測するに、このワクチンの接種時期は1歳6ヶ月ぐらいで、喃語が消えて自閉症の症状が出てくる時期と一致するのと、場合によっては数百万人に1人と言われているワクチン接種による無菌性髄膜炎を起こして障害が出たのとを考えます。
有機水銀は慢性毒です。急性毒性を起こす量としては非常に大量で、この場合は死に至ります。有機水銀を長期間にわたって摂取し続けた例としては、水俣病が有名です。しかし、このアメリカの話では予防接種後数日以内に発症したらしいです。こんな有機水銀毒性は考えられません。
他にも水銀が自閉症に関係ないという話はいくらでもできます。
日本でも防腐剤として含まれていたので、ニュースが流れてからは厚生労働省も反応して量的には無害だが入っていないに越したことはないとして、一年ほど前から麻疹ワクチンに水銀を含んではいないです。
これで果たして自閉症児が減っていくのでしょうか。
答えはNOです。
全く関係ないので、やはり人口700人に1人の割合で自閉症児が生まれてくるでしょう。
アスペルガー障害も含めると200人に1人の割合で生まれてくるでしょう。
番組でコメントしたのが誰かは知りませんが、医者が言ったとしてもそれが事実とは限りません。
頭蓋形成法を行っている医者がいたり、小児科の大学教授がHPで自閉症の原因はテレビだと書いているぐらいです。
水銀のキレート剤については、ですので全く無効です。それどころか副作用で有害でもあるでしょう。今、病院にいますのでそのキレート剤の副作用について調べてみます。
一般の人が入手するのは難しいでしょうが、たとえ手に入ってもそれを子供に投与するのはある種の"虐待"と考えます。どんなことがあってもやめて下さい。
(丸橋裕之)
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■続報:水銀のキレート剤は"BAL"です。"バル"と読みます。第一製薬から発売されている薬です。
主成分:ジメルカプロール100mg/1mL、添加物:安息香酸ベンジル200mg/mL、ラッカセイ油
効能・効果:ヒ素、水銀、鉛、銅、金、ビスマス、クロム、アンチモンの中毒
用法・用量:成人1回2.5mg/kgを第1日目は6時間間隔で4回筋肉注射し、第2日目以降6日間
は毎日1回2.5mg/kgを筋肉注射する。
重症緊急を要する中毒症状の場合は、1回2.
消化しない食物のための単語5mg/kgを最初の2日間は4時間ごとに1日6回、3日目には1日4回、以降10日間あるいは回復するまで毎日2回筋肉内注射する。
なお、年齢、症状により適宣増減する。
副作用:過敏症(頻度不明)
薬効・薬理:酵素を再賦活化できる程度は時間経過にともなって低下するので、本剤による治療は中毒の初期に処置すれば効果的である。
以上です。
この薬剤を使用するのは保護者である親の自由ですが、当然保険適応はありませんし、副作用などについては苦情を言うところもないです。すべて自己責任で行って下さい。
私は我が子には10000例以上の有効症例が確認されてから使いたいと思います。
ちなみに水銀による神経障害は不可逆的です。いくら水銀が取り除かれたとしても神経症状は改善しないでしょう。
○ワクチンなどの水銀についての参考HPです。これもすべてが正しいとは限らないという目で読んでください。
○医学界では最も権威のある学会誌であるランセット誌に載っていた論文を和訳していただいているHPです。専門的な用語もありますが参考にしてください。この学会誌に載るには非常に難しく、根拠のない論文などはまず載りません。全部事実と考えてもいいと思います。
○全文を読む必要はないと思いますが、要約だけ読んでください。
(丸橋裕之)
☆以上、詳細は日本自閉症協会奈良県支部のHPきずなをごらんください。
□2004年3月12日:
日本自閉症協会は、TBS番組制作担当者との話し合いの場をもちました。
□2004年3月14日:
【資料2】社団法人日本自閉症協会の声明文
TBS「報道特集」で放送された「自閉症の水銀排出療法(キレーション)」について
会 長 石井哲夫
研究部長 山崎晃資
3月7日のTBS「報道特集」で、「自閉症治療にキレート剤が有効である」という放送がなされ、その直後から日本自閉症協会事務局への問い合わせが殺到しております。
科学的な根拠について
研究部会が中心となって、可能な限り種々の情報を集めて検討致しましたが、現時点で「自閉症にキレート剤が有効である」という科学的な根拠は得られておりません。
水銀排泄療法(キレ-ション)に科学的根拠が乏しいという理由のいくつかを述べます。
(1) 水銀化合物が自閉症の原因であるという根拠が不十分です。世界的に権威のある専門科学雑誌「ランセット」でも、水銀化合物との原因論的関連は明確ではないと記載されております。
(2) 今回の放送で、キレート剤が有効であったというお子さんの発達歴、既往歴が不明ですので断定はできませんが、「自閉症状(またはその早期徴候)が明らかになる以前に、水銀化合物が与えられた」という確証が不明確です。どのような方法によって有効性を確認したのかも不明です。
(3) キレート剤が、脳血液関門(血液中にある物質が脳の中にむやみに入り込まないようにするための、関所のようなものです)を通って脳内に入ることが確認されているのでしょうか。
利用する場合のリスクについて
(1) キレート剤には、悪心・嘔吐などの消化器症状がしばしば認められます。
(2) キレート剤は、当然のことですが、自閉症の治療薬としては承認されておりません。もし、自閉症児に使用するとなると「適応外使用」となり、万一、重大な副作用が出現した場合には、処方した医師とご家族の責任となります。種々の保障制度もまったく適応されないことをご認識下さい。
これらのことから、日本自閉症協会としてはTBS「報道特集」の担当者と面談を行い、次回の「報道特集」のなかで「テロップ」を流すなど、適切な対応をとるよう求めております。【→後掲】
自閉症の原因究明と治療についての取り組み
以上の事柄から、現時点では、キレート剤が自閉症治療に有効であると断定することはできません。ただし、科学的な発見は、ささいな事実から芽生えることが多いことも歴史的にはよく知られております。
環境汚染が進むなかで、子ども達の健康な成長を阻む危険性のある多くの物質が知られるようになってきており、現時点においてはキレート剤が有効であるとの証明はされておりませんが、完全に否定することもできません。
おそらく、自閉症は、特定の物質だけによって発症するものではなく、遺伝子の配列異常を含めた複合的な要因によるものであると考えております。
自閉症の子どもが、少しでもよくなる方法があれば試してみたいとのお気持ちもよくわかりますが、科学的な根拠が得られて、安心して使用できる方法がみつかるまで、慎重な対応が必要と思います。
研究部会に関係する専門家集団といたしましても、一日も早く自閉症の原因と治療法が見いだされるように努力しております。
以上
□2004年3月14日:
【資料3】自閉症児者を家族に持つ医師・歯科医師の会の声明文
TBSテレビ報道特集「自閉症の原因は水銀?」について
ここで、赤ちゃんはあなたの中に育つん。
afd水銀と自閉症に関する調査委員会
大屋滋 矢崎史郎 岡田稔久 木村隆 山川孔 工藤泉 竹元伸之 久保田潔
石川清隆 古賀義孝 田中恭子 高木佐知子 井上かんな 小澤武司 市川宏伸
私たちは、自閉症児者を家族に持つ医師・歯科医師の会(autism-family-doctor:afd)のメンバーです。
3月7日にTBS系列で報道特集「自閉症の原因は水銀?」が放送されました。この番組では学術的に不確実な情報が、誤解を招きやすい形で報道されていました。そのため放送終了後から自閉症児者を抱えるご家族の間で大変な混乱が起きています。私どもafdではこの事態を重くみて、緊急に『afd水銀と自閉症に関する調査委員会』を立ち上げました。医師・歯科医師であり、同時に自閉症児者を抱える家族でもある両面の立場から見解をまとめましたのでここに提言させて戴きます。
今回の放送は『自閉症の原因は水銀であり、それは キレート治療によって治癒する』、という印象を強く与えるもので、番組編集、さらにキレート治療や自閉症の水銀原因説において次のような問題があると思われます。
1.今回の番組編集について
24分間あった放送時間のうち、自閉症の説明などについて約5分間、残りのほとんどの時間はキレート治療の紹介及び有効性に関する内容であり、副作用についての説明はわずか約30秒ほどでした。さらに『水銀が自閉症の原因である』というような言葉をCMの直前直後に繰り返し使ったり、『キレート治療によって改善した』というような言葉も数回にわたり使い、キレート剤投与を自閉症の治療として強く印象づける内容でした。
一般的に、幼児期~学童期前半は適切な療育がなされれば特に伸びる時期です。番組では、発達クリニックでの検査場面やインタビューを部分的に組み込み、専門家の視点からみてもキレート治療の効果のみで伸びたと思わせる編集がなされているように感じられました。
2.キレート「治療」について
放送されたキレート「治療」の効果については、これを実践している家族と推奨しているごく一部の学者による主観的評価であり、自閉症の治癒もしくは症状改善の評価基準はきわめて曖昧でした。
仮に症状が改善したとしても、キレート剤投与による症状改善なのか、それとも個々の成長による症状改善なのか、似通った症状を持った自閉症児においてキレート剤を投与した群としなかった群での比較検討はなされたのかなど学術的・医学的な疑問が残ります。
キレート剤投与は副作用が大きく、副作用を上回るほどの自閉症の症状改善効果が証明できない限り、治療ではなくまだ研究レベルであり、私たちはこれを推奨できません。
3.自閉症の水銀原因説について
水銀が自閉症の原因であると断定する科学的根拠はありません。水銀と自閉症の関係を示唆する一部のデータがあるのは事実ですが、水銀と自閉症の関係を否定するデータが圧倒的です。たとえば水銀が自閉症発症の原因というのならば、水俣病などの水銀汚染地域において本人または次世代に自閉症児・者の数が突出するという疫学的データがあるはずですが、私どもが調べてみた限りそのようなデータはありませんでした。さらにイギリスやアメリカで行われた大規模な疫学調査の結果でも、チメロサール含有のワクチンの接種と、自閉症の発生率の間に関連はみられず、今のところチメロサール含有のワクチンが自閉症の原因であるとする仮説を支持する証拠はないのが現状です。これらの事実は、水銀と自閉症の関係を示唆す� �一部の研究結果は(a)偶然か、(b)調査方法に欠陥があったためか、(c)水銀との関係は「みかけ」上のもので真の原因は別にある、などによる可能性が高いことを示すものです。
私たちの知る限り、これまでも自閉症治療に関する様々な情報、特効薬の話題がありましたが、いずれも数年で下火になっています。将来、誰もが認める結論に行きつくかもしれませんが、なかなか難しいようです。いろいろな情報を横目に見ながら、焦らず、地道に療育に励むのが「急がば回れ」かもしれません。
テレビ、新聞などメディア関係者の皆様には、自閉症児者を抱える親や家族の立場や心情を十分に理解していただくと共に、より正確で客観性のある情報を、誤解の生じないような形で報道していただきますようお願いします。今回の� ��道特集でも、自閉症は親の育て方により生じるのではなく、何らかの原因による脳障害に起因する発達障害であることをしっかり説明をしている点では、評価出来ます。私たちは、自閉症児者の幸福に繋がるより良い報道がなされるために、可能な限り協力させていただく用意があります。
最近の参考文献
「関連無し」の文献です。
Madsen KM, Lauritsen MB, Pedersen CB, Thorsen P, Plesner AM, Andersen
PH,Mortensen PB.
Thimerosal and the occurrence of autism: negative ecological evidence from
Danish population-based data.
Pediatrics. 2003 Sep;112(3 Pt 1):604-6.
Verstraeten T, Davis RL, DeStefano F, Lieu TA, Rhodes PH, Black SB,
Shinefield H,Chen RT; Vaccine Safety Datalink Team.
Safety of thimerosal-containing vaccines: a two-phased study of computerized
health maintenance organization databases.
Pediatrics. 2003 Nov;112(5):1039-48.
Erratum in: Pediatrics. 2004 Jan;113(1):184.
Stehr-Green P, Tull P, Stellfeld M, Mortenson PB, Simpson D. Related
Articles, Links
Autism and thimerosal-containing vaccines: lack of consistent evidence for
an association.
Am J Prev Med. 2003 Aug;25(2):101-6.
「関連あり」の文献です。
Geier DA, Geier MR. Related Articles, Links
A comparative evaluation of the effects of MMR immunization and mercury doses from thimerosal-containing childhood vaccines on the population prevalence of autism.
Med Sci Monit. 2004 Mar;10(3):PI33-9. Epub 2004 Mar 01.
以上、
☆日本自閉症協会千葉県支部のHPにも掲載
☆日本自閉症協会愛知県支部のHP冒頭の記事もごらんください。
http://homepage2.nifty.com/tubomi-aichi-autism/
□2004年3月14日:
【資料4】協会の申し入れを受けてTBSの行った対応(協会からの各支部への通知による)
上記(資料2参照)を受けて、3月14日の同番組内において、最後に次のようなコメントをキャスターが読み上げました。
「先週の放送で、体内水銀を排出するという自閉症の治療についてお伝えしましたが、放送後、非常に大きな反響がありました。/キレート剤の有効性と安全性に関しては、番組でもお伝えしたとおり、日本ではまだ科学的なデータが得られていません。副作用もありますので自閉症の治療については、専門医にくれぐれも慎重にご相談いただければと思います。/キレート剤の治療については、専門医に慎重にご相談いただきたいと思います。」
□2004年3月21日:
【資料5】TBS初め各報道機関にお願いしたいこと・・・・・・・・東京都自閉症協会からのコメント
*今回の番組の冒頭に「自閉症とは自ら閉じると書き、ひきこもりなどと受け止められているが、そういうものではない」とあり、これは、常日頃、私どもが一般市民の方々に訴えたいことでしたので、たいへんありがたいと思いました。さらに、30分ほどの時間を費やして、自閉症が中枢神経の機能障害であること、それに対しては対処療法がありうることを報道していただきました。
*ただ、残念であったのは、キレート療法の効果を説き急いだと思えるような内容構成になっていたことです。
司会者は冒頭の言葉に続けて、「自閉症についてはその原因がまだつきとめられないでいること、だからあくまでも今試みられている療法のひとつとして紹介する」という慎重な言い方でしたが、実際の番組の中では、結果として水銀原因説、キレート療法の効果、というものをうたいあげる内容になっていたと思います。
最後に司会者は、「(番組内の)親御さんたちは確立されていないこの療法を試すのにはリスクがあるが、実践している。一定の効果をあげているのは事実のようです」と結んでいました。
*番組が自閉症児者の親たちに与えた動揺は、はっきり言って、少なくありませんでした。それはそのまま、この障害の子どもたちをかかえた親たちの苦悩の証明であるといってもいいと思われます。治るといわれれば藁をもつかみたい……偽らざる本音でしょう。だから、その気持ちに対して、この報道の内容が誠実であったかを問いたいと思います。
○水銀原因説は大方の批判を受けています。それについての言及が欠けています。
○しかも「自閉症が治る」という証言をそのまま放送しています。
(「治る」といわれれば親はどんな苦しいことを子どもに課すとしても、実行するでしょう)
○キレート剤服用の危険性についての言及が欠けています。
○キレート剤服用で状態が改善された子どもたちの内容の検証が不足です。
○キレート剤服用だけで状態が改善された、ということへの検証が不足です。
などが、すぐにも挙げられる問題点です。
今回のことに寄せて、あるお母さんは次のように発言しました。親の気持ちをたいへんよく表していると思いますので、お読みください。
「・・・・ネットで実際のキレーション体験HPなんかを読んでいると「わー大変、うちにはできない!」となるか、「だめでもともと、どんなに大変でも、どんなに子供に負担がかっても、やってみたい!」と思ってしまう親もいるに違いないと思ってしまいました。
うちのように大きくなってしまって、たとえ有効な方法だとしても今からでは効かないだろうと引いて受け止めようとしても、気持ちが騒ぎます。治るのだろうか・・・もしそうなら・・・・
子どもが幼児期で、診断を受けたばかりのときであったら、どんなに悩んだことだろうと思います。
自閉症なのは不幸なことでしょうか、自閉症は治さないとならないのでしょうか、
キレート剤の服用が子どもの負担になるというなら、それを承知でやらないといけないでしょうか。
自閉症の原因が解明され、それによって治療方法が見つかれば、本当にうれしいです。
それまでは、本人の暮らしがしやすく、楽しいものであるよう、努力していきたいと思います。
自閉症だって、今の息子は本当にかわいいと思います。」
*どうぞ、自閉症の原因が解明されるような手立てにお力を貸してほしいと思います。さまざまな情報もお知らせください。ただ、プラスもマイナスも含めて、親が自分で判断できるような情報提供であってほしいと思います。
*一方でまた、自閉症にかかわらず、あるいは自閉症という障害を抱えながらじょうずに生きている人、あるいはそう生きていきたいと試みている人、それを支えようとしている人たちの姿もお伝えいただけたらと思います。
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